アルバム「きみにあいたい」

初めは、池間史規が遺したインストルメンタルに歌詞をつけたら歌になった、それを形にしたい、それから池間と共作した歌も録音しておきたい、そんな思いだった。
池間の親友であった作編曲家寺嶋民哉氏に相談したのが始まり。
レコーディングが始まる前に、池間史規カバーライブで歌った。それを聴いた寺嶋氏が「池間のカバー曲も入れよう」と提案。ミニアルバム的なことを考えていたものが、蓋を開けてみたら11曲入りのフルアルバムができあがった。
池間からのメッセージ「繋いでおいたからあとは自分で頑張れ」とはこういうことだったのか。やると決めて相談したらこんなに力を貸してくれる人が周りにいる。やると決めたらすぐにでもライブができる。池間史規という存在がなかったら、出会っていなかったら、今私は歌を歌ってはいなかったかもしれない。
名曲揃いの池間作品の中から、どれをカバーして録音するか悩みに悩み抜いて、5曲厳選。本当はまだまだ入れたい歌があったのだが、それを言ったらキリがない。
プロデュース・アレンジの寺嶋民哉氏、アレンジ・ピアノ古垣未来氏、ディレクション・二胡・コーラスで参加してくれた野沢香苗氏。池間が信頼を寄せていたギタリスト佐々木章氏。バイオリン榊渚カルテット。優しいケーナ奏者菱本幸二氏。可愛いパーカッショニスト上原なな江氏。関わってくれたすべての人に感謝してもしきれないくらいの思いがこもったアルバムとなった。
そしてすべての曲に池間史規の愛が込められている。


「きみにあいたい」

作詞・作曲  池間史規

聴いた人は誰もが亡くした大事な人を思い浮かべて涙する。
私にとって思い浮かべるのは父だった。父と娘という関係性はとても切ない。大好きなのに共通の話題がなかなか見つけられず間を持て余す。そして、娘は軽口のつもりで父を傷つけたりする。大人になっても子供の頃の関係性とあまり変わらない。変わらないというより変え方がわからない。いつまで経っても子供でいたい。
父が亡くなってから、もっと話をすればよかったと思う。もっと実家に帰ればよかったと思う。「お父さんだったらどうしただろう」と思うことも少なくない。
母は苦労しただろうが、私にとっては愛する父なのだ。

その歌が、一変した。2019年12月28日。歌を作った本人が「あまりにも突然」に逝ってしまった。池間を知っている人、この歌を知っている人は誰もがそう思ったことだろう。

私はがんばって生きてるよ。
ごめんねって言いたい。
ありがとって言いたい。
どうしてって聞きたい。
ばかやろって言いたい。
いつまでも一緒に笑っていたかった。
話がしたかった。
あいたいよ。

「雪あさぎ」

作詞 池間由海 / 作曲  池間史規

「雪あさぎ」「春が降る午後」「夏の音」「ほんとうのしあわせ」「カタワレ」、この5曲は、静岡県袋井市での『音画物語』というコンサートのために池間史規が作曲したインストルメンタルに私が詞をつけたもの。
「新曲ができない」と悩む夫に「あの曲に詞をつけたら〜?」と言ったものの、「うーん、あれはねえ・・・」と採用にならなかった。
夫が旅立ってから、頻繁にこの曲たちを聴いていたら言葉が浮かんできた。
新曲が5曲もできた。
この「雪あさぎ」は原題が「WINTER WALTZ」。
冬、夜のうちに降った雪。まだ明け切らぬ薄い蒼い時間。女が眠っている間に出て行く男。女は出て行く男に気がついているが寝たふりを続ける。お互いに思いやるゆえ。
別れはいつも辛いものだけど、互いを思いやる気持ちは嘘がない。それがわかっていれば誰も傷つくことはない。恨むこともない。あとに残るのは優しさ。優しい人は強い。
「雪あさぎ」は造語。明けやらぬ時間を色で表現したかった。「浅葱」と漢字にすると、「ネギ」のインパクトが強く、平仮名表記にしてみた。浅葱色は水色に近い綺麗な色。

「ニュース」

作詞・作曲  池間史規

池間史規の楽曲の中でもこの歌ほど聴いた人の心に印象深く残るものはないと思う。そんな歌なので、わたくしごときが歌ってもいいものだろうかと初めは躊躇した。2021年のカバーライブで歌ってみて、「もしかしたらアリなのかもしれない」と思ったのと、アルバムに池間カバーを収録するのにこの歌を除くのはやはりあり得ないと思うに至った。
音楽業界40年のあいだ、夫はいろいろな経験をしてきた。私が聞いただけでも、人に裏切られたこと、悲しい思いをしたこと。業界ならではのあれこれ。でもそれ以上に人のあたたかさ、優しさに触れてきた。彼はとても優しい人だった。あの優しさは、天性のものでもあるが、周りの人の愛に触れてきたからだと思う。争うことなく歪み合うこともなく人は生きていけるはずと信じていたのだろう。人はあたたかい。
イントロはニュースショーのオープニングのイメージ。寺嶋民哉さんの素晴らしいアレンジ。PVではニュースキャスターになってみました(笑)

「春が降る午後」

作詞 池間由海 / 作曲  池間史規

原題「Here Comes The Spring」
このメロディを聞いたイメージは“降り注ぐ光と花びら”
春になって桜が咲き始めると、それまで俯いて歩いていた人々が上を見上げるようになる。まだかな、あ、もうすぐ咲きそう。そんな時、人は知らず知らず笑顔になる。
夫婦で引っ越して来たこの街は桜並木がずっと続いている。春が来たら私も上を見上げて、お気に入りのあの桜の樹にイケマの笑顔を見つけるのかもしれない。
この歌、落ちてくる花びらというより春の風に舞い上がっていく花びら。
野沢香苗ちゃんのコーラスがそれを際立たせてくれています。

「愛しいひと」

作詞・作曲  池間史規

初めは全く違う歌詞だったようです。とある理由から歌詞を変えてライブで歌っていましたよね。この歌のファンが多かったものの音源として残っていなかった。それであえて私が歌ってレコーディングしました。
「これは由海さんのことを思って書かれたんでしょうね」と言われますが、多分違います(笑)。でも歌詞にあるように「時を重ねて想い重ね」たからできた歌ではあるんでしょう。「抱きしめてあげたい」ですよ。
余談ですが、イケマの初盆の時に夢にイケマが出て来まして、なぜかスポーツウエアを着ていて(笑)、にこにこ隣に座って来たから抱きしめてあげたんです。そしたら目が覚めたのですけど、抱きしめた時の感覚がリアルに腕に残っていて「あー、お盆にはやっぱりちゃんと帰ってくるんだなあ」と妙に納得したものです。もちろん泣いちゃったよ。
この歌の間奏での鍵盤ハーモニカとシーク、ケーナの掛け合いは聴きどころです!

「夏の音」

作詞 池間由海 / 作曲  池間史規

原題「Summer Glass」
Summer Glassという言葉からは、子供の頃に遊んだあの場所の草いきれを思い出す。10歳の頃まで住んでいた山口県の片田舎の町。遠くないところに山がそびえ、家の裏には川が流れる。海までは少し遠くはあったが子供の足でも歩いていけないことはない。幼馴染との遊び場は神社のある山の崖。自分たちだけの基地である。気がつくと夕方になっていて、慌てて帰って叱られたこと、川に向かって小石を蹴飛ばしていたら履いていたサンダルが一緒に川に飛んでいってしまったこと、田んぼの畦道でカエルをつかまえたこと、れんげそうで冠を作ったこと(これは年上の従姉妹が作ったのだったかもしれない)、思えばいい子供時代を過ごしたようだ。それから家は何度も引越しを繰り返した。何度も繰り返していろんな町に住んだけれど、やはり親のいる家が「ふるさと」なんだなと思う。


「夢の先」

作詞 池間由海 / 作曲  池間史規

詞が先にできた唯一の曲。
イケマと一緒に暮らすようになって全くと言っていいほど創作ができなくなっていたのだけど、ある日夢を見て起き抜けにスケッチしておいたものを元に書いてみた歌詞。
「こんなんできたんだけど」とイケマに見せたら、その歌詞カードを持って仕事部屋に入り小一時間で出て来て「あのね、曲できたんだけど、歌詞を一部変えてもらってもいい?」え?もう?え?歌詞変える?はいはい、なんでも変えますよーーーー!
それでできた歌。カラオケもできていて、あとは歌入れをするだけ、というところまで準備してたのに歌入れせずに旅に出てしまって(泣)。
「これ、完成したら、ちょっと誰かに聞いてもらう」と言ってたのに(泣)。
寺嶋さんのおかげで完成させることができました!
幸せだった頃にこんな「どうにもならない恋の歌」を書いてしまったのだけど、幸せじゃないことも経験して来ているから幸せを感じられるわけで。あ、すみません、また惚気てしまいました(笑)

「ほんとうのしあわせ」

作詞 池間由海 / 作曲  池間史規

原題「From Summer To Autumn」
「必ず帰るという約束」というテーマでいつか歌詞を書きたいと思っていた。このメロディでそれを書こうと思ったのだけど、書いているうちに「帰ってこなくてもあなたがそこで幸せなのならそれでいい」という方向にシフトチェンジしていた。愛というものは多分「私」は要らない。「無私の愛」なのである。人は誰かの役に立つために生まれてくるという話を聞いたことがある。はたして自分が誰かの役に立っているのかどうかはわからないけど、あれは、あの思いは「無私の愛」だったかもしれないという経験はした。叶わなかったけど。母の子に対する思いは紛れもなく「無私の愛」で、イケマの歌にはそれがあちらこちらに散りばめられている。
そのイケマはある時「旅に出てくる」と言って出かけて行った。旅というからにはせめて一泊くらいしてくるだろうと思った私は甘かった。帰巣本能の強いイケマはその日の夕方帰ってきた。沿線の終点まで行って、ショッピングセンターでスニーカーを買おうかどうしようか迷った挙句何も買わずに帰って来たらしい。私は心の中で叫んだ「お前何しに行ったんやー!」(大笑)

「カタワレ」

作詞 池間由海 / 作曲  池間史規

原題「Planet Shadow」
少しスピリチュアルな話になるかもしれないが、どうもイケマと私は前世からのお付き合いがあったようなのだ。夫婦とは限らないだろうし、男女も逆だったかもしれない。だけどどうもいつも何かしらの縁があって、今世では夫婦として生きることになったらしい。今世での付き合いは短かったけども。出会いからのいろいろを思うと障害があってしかるべきところを何故かすんなりと運ばれていった。あ、そうですか、いいんですね、このまま行っちゃって。という感じ。多分またどこかで会えるのかもしれないし、もうこれで終わりかもしれないし、それは私がイケマのところに行ったらわかるのかしら。「なんかこっちはすごいんだよー」と言ってた「こっち」に私はまだもう少し行けそうもないけど。

「美しい星」

作詞 池間史規・鎗水洋 /作曲  池間史規

この人はなんて純粋な心の持ち主なんだろうと思わせてくれる歌のひとつ。
こんなに汚れのない歌はそんなにあるものじゃない。歌だけど、彼は本気でこう思って書いたのだと思う。初めてこの歌を聴いた時、私の心は疲れて汚れていたのかもしれない。こんな歌を作るなんてどうかしてると。だけど聴けば聴くほどにこの歌は沁みてくるのだ。疲れた現代人に「今生きてるこの星は素晴らしい」ということを気づかせてくれた。
人間によって環境が壊されつつある今、もう一度地球を守るために人間は何をすべきかを考える時であると思う。


「シアワセノカケラ」

作詞・作曲  池間史規

岩崎宏美さんに提供した名曲。これを私が歌ってしまっていいものかとも思いましたが、ボーナストラック的にこんな形で入れることになりました。(こんな形、というのはぜひCDを聴いていただければ、と思います)一度ライブでイケマにピアノを弾いてもらって歌ったことがあって、これはYouTubeにアップしてあるので合わせてお楽しみいただいたら喜びます。今でもライブでは必ず歌っていますが、歌う度この歌の持つ力に圧倒されそうになります。だからいつも足を踏ん張って肚に力を入れてます(笑)
シアワセノカケラはいつもいつでもあなたの中にある、そんな大事なことをつい私たちは忘れてしまいがちですが、心に留めて前を向いて歩いていこうと思います。
ああ、いい歌だ。